私が以前保険会社にいた時、有名な経営者だった某会長がおっしゃっていました。「僕は物理屋なんで何か迷ったら原理原則で考えるようにしている。何でもそうだよ」。大変示唆に富んだ言葉でそれ以来私も何か迷った時には、「原理原則で考えるとどうか?」「決めようとしていることの真の目的は何か?」を思考の真ん中において考えるようにしています。
例えば、生命保険の設計をする時一番大切なことは「もしもがあった時に困らないようにするにはどうしたら良いか」です。よく、FPやユーチューバーの方で医療保険の支払う保険料と受け取る給付金を計算して、払った保険料以上の給付金を受け取る確率は極めて低いので医療保険は必要ないと言い切ってしまう人がいます。医療保険が何のためにあるのかを考えれば、その論理がいかに乱暴な意見であるかわかるはずです。突然のケガや急な入院などの時に困らないように安心して生活できるように加入するのが医療保険です。預貯金や資産に余裕がありそのような時でも困らない方であればそもそも医療保険は必要ないのです。ただ逆に急な出費が厳しい人や預貯金や資産を減らしたくない方は医療保険が有効になります。そこに損得計算はありません。それを払込む保険料と受け取る保険金の金額のみで医療保険は不要だと言い切ってしまうのには少し無理があるように思います。また、安心感を得るためだけに医療保険に加入される方もいます。最近実際には困らないかもしれないが、入院してしまった時に娘にこれで頼むねと言えるように医療保険に加入された80代の方もいました。
最近のNISAが良いか変額保険が良いかという論争も同じです。資産形成だけなら、NISAが良いに決まっています。ただ、そもそも保障が必要な方、積立ての途中で大きな病気などで積立てが中断するリスクを避けたい方は変額保険の払込免除特約や保険金で安心して将来に備える選択もあります。また、繰り入れ比率の変更や積立金の移転を利用してスイッチングが簡単にできたり、状況によって積み立てるファンドを簡単に変更できるなど変額保険のメリットも少なくありません。最終的に終身保険に変更すれば保険金として資産を次世代に合理的に渡すこともできます。Youtubeなどで極端に言い切ってしまう話には本当に嫌になってしまいます。以前、「生命保険は掛け捨てにはいりなさい!」というような本を書いた経済評論家もいましたが、これも同じです。
生命保険もNISAもすべては手段です。いろいろな選択肢から各々の目的にあった手段を選択する権利を奪うような極端な意見は「売らんかな」の匂いがプンプンして、「いい加減にしてくれ」と言いたくなります。(み)