先日、NHKで「八甲田山死の行軍」についての番組がありました。かつて、映画で「八甲田山」を観たことがありましたが、細かなことは忘れていたのでびっくりするような内容でした。
まず、驚いたのが亡くなった方の人数でした。雪中行軍に参加したのが210名、遭難で亡くなった方が199名。冬山の遭難事故での最大級の人数が亡くなっていました。生き残った方は11名にすぎませんでした。
次に驚いたのは、リングワンデリング。ホワイトアウトや真っ暗なところを歩いていると、真っ直ぐ進んでいるつもりで人は同じところをクルクルまわってしまうということ。実際この八甲田山の遭難では50名もの兵士が500m以内で亡くなっており、同じところをクルクル回っていたことが分かっています。暗闇とホワイトアウトの中行軍した兵隊はさぞ辛かったと思います。
最後に100時間に及ぶ遭難の過程でリーダーが異なった決断をしていれば、結果は全く違うものとなったということです。私はこの事故は避けて通ることのできない突発的な出来事であったと思ってました。しかし、実際には何回かの局面でリーダーが違った決断をしていれば、多くの命は失われずに済んだのです。1泊2日の行程。まず、所持してきた装備の選び方。ビバークするための天幕も持たず、野営する予定地が温泉地だったことから、手ぬぐい1本しかもたない兵隊もいたとのこと、東北出身者が多く雪には慣れていたことが甘い判断を生んだのかもしれません。また、1日目の昼ご飯を食べた後に午後の天気が悪化することが分かった時の判断。装備が手薄なので引き返しましょうという進言もあったらしいのですが、午前中のペースで行ければ大丈夫だろうと予定通り出発したこと。2日目予定地に着けず途中で野営したが、寒さのため朝を待たず午前2時に出発したこと。などなど、むしろ人災であったのではないかと思えるほど、リーダーの決断がすべて裏目にでてしまいました。その結果、199名という命が失われたのです。
「HOPE FOR THE BEST PLAN FOR THE WORST.」私の好きな映画の中でCIAの高官が危機管理(ジェイソン・ボーン)に対する心構えとして言ったセリフです。「最善を望み、最悪に備える」八甲田山の指揮官が最善を望み、最悪に備えていたら、結果は違うものになっていたはずです。
現在、新型コロナウイルスの蔓延で本当に苦しい時を迎えています。先も見えず、なにが正しいのか何が間違っているのかも分からない状況です。私は「HOPE FOR THE BEST PLAN FOR THE WORST」を肝に据え、万全の備えと希望を持った決断でことにあたりたいと思っております。(み)
*冒頭の写真は群馬県玉村町の福島橋から見た2018年の初日です。